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指導者に対する運動指導方法の研修を導入

写真 幼稚園や保育園、小学校、特別支援学級などで運動指導を行う可能性のある教員や保育士等に対し、専門家による運動指導方法の研修を導入することを、豊島区へ提案し、一部が今年度から始まっています。
子供達の運動能力の低下が指摘されて久しい中、これまでは有効な手立てを打ててこなかったという問題がありました。
現場での運動指導能力の向上を通じて子供達に必要な運動能力を獲得させ、子供達の体力と集中力の向上を目指します。

子供の運動能力が低下している

文部科学省の「体力・運動能力調査」によると、子供の体力・運動能力は、昭和60年頃から現在まで低下傾向が続いています
現代の子の方が親世代よりも体格には恵まれているにも関わらず、体力測定の結果が伸びていないという状況。
子供の体力が低下した結果、つまづいて転ぶときに手を付くことができない、飛んできたボールを避けられない、などの咄嗟の動きができない子がいます。
子供の体力が低下をしているということは、将来的には国民全体の体力の低下に繋がり、健康面でのリスクが増すと考えられます。

なぜ子供の運動能力が低下しているのか

「スキャモンの発達・発育曲線」によると、個人差はあるものの神経系統は4~6歳頃までに成人の約80%まで成長します。同じく成人の約100%になる6~12歳頃を「ゴールデンエイジ」と呼び、最も運動が身体に効果を及ぼす時期であると言われています。
この時期には一つの専門的な運動ではなく、色々な体の動かし方を学んだ方が、より運動神経をよくします。

少子化が進むまでは、子供達は遊びの中でこのような運動能力を獲得していました。
大人の方であれば、ご自身が子供の頃、木登り、鬼ごっこ、缶蹴りなどの他、野球やキックベースなど、様々な種類の運動をしていたと思い起こすのではないでしょうか。
しかし、現代では少子化が進んだ上に習い事に通う子が多くて、放課後に遊ぶ仲間が少ない。昔は木登りができる木や色々な遊具があった公園でも、危険だからという理由で同じようなことができなくなり、遊び方が変化している。
「時間」「空間」「仲間」が減ったことが、子供達の体力が低下しているという結果に繋がっているのでしょう

なぜ運動指導の研修が必要か?

現場への支援

簡単な準備運動から体育の指導まで、幼稚園や保育園、小学校などでは子供達へ先生方が指導をする場面は沢山あります。
しかし、スポーツ科学や子供の特性などを理解して運動指導をしている先生は意外に少なく、運動指導を苦手に思う先生方は現場に多いようです。
このような教育現場の支援として、指導方法の研修を提案しています。

子供にとっては運動能力の向上

的確な運動指導を受けることによって、より運動能力の向上が図られます。
運動が苦手だった子であれば体を動かすのが好きになるかもしれませんし、授業中に座っていられなかった子であれば集中力が高まるかもしれません。
これまでできなかったことができるようになると、その子の自信にも繋がります。

放課後等デイサービス施設を視察

写真 この提案のきっかけとなったのは、ある放課後等デイサービス施設(受給者証がある発達障害を含めた障害がある子を受入れする療育施設)の視察をしたことです。
放課後等デイサービスには、子供を預かるのをメインにしている施設もあれば、学習や音楽などを取り入れているところもあります。また、障害が重度の子を多く受けているところと、軽度な子が中心のところなど、様々な形態があります。
この施設は運動と学習指導をするという形態でした。

障害がある子は自分の体の感覚がうまくつかめない場合が多いので、この施設では日課として体の感覚統合のために粗大運動(マット運動など体を大きく動かす運動)などを行っています。
こうした運動を行うことで、施設に来たばかりの時は落ち着きのなかった子が、数か月もすると施設にいる間は座っていられるようになった、などの効果があがっているとのこと。

また、障害がある子の中には、複数の指示を受けるのが苦手な子がいるため、担当の先生が指示の出し方を工夫して対処しています。

自立を促す目的で、学習のための椅子や机、運動に使用するマットなどの準備や片付けは子供達に行わせます。
本の音読やドリルなど、学習も日課の一つです。
このようなしつけ、勉強、運動を通じて、極力子供達を自立させていこうという施設でした。
視察を通して印象に残ったのは、子供達の表情が生き生きとしていたことです。
やらされているのではなく、子供達が楽しんでいることが伝わってきました。

視察後、これは障害がある子だけに限らず、体育の指導に活かせるはずだと感じました。
指示の単純化などは、障害がない子にも通じる話です。
普通級の子でも座って授業を受けるのが苦手な子もいますし、小学校に入学してからこの状態が続いて学校生活になじめないのが小1プロブレムです。

その後、この施設の指導者に区内の就園前の子育てサークルなどで運動指導をしてもらい、この指導方法は応用が利くということを実感。
区内の幼稚園、保育園、小学校等で普及させることができたら、効果はかなりあがるだろうと考え、教育センターへ研修に取り入れるように働きかけをしました

※放課後等デイサービスとは…障害のある就学児童・生徒が対象で、放課後や長期休暇中に受けるサービス。
※療育とは…障害がある子供が社会的に自立することを目的として行われる医療と保育のことです。

スポーツ科学に基づいた運動指導研修が実現!

教育センター所長に提案をしたところ提案の主旨をご理解いただき、また所長の素早いご決断もあって、教育センターの「うきうきグル―プ」を指導する臨床心理士や区立幼稚園のスクールカウンセラーの方に研修が行われました。

【研修概要】
講師:一般社団法人子ども運動指導技能協会
研修内容:
1.準備運動の実践「実際に体を動かしながら指示の出し方やポイントについて」
2.準備運動の座学「実践で行った運動の意図や指導方法について」

研修後、「うきうきグループ」の日課に「うんどう」が加わり、研修で得られたことが現場で活用されています。

【今後の方向性】

スポーツ科学に基づいた運動指導研修は障害がある子だけに有効な指導方法ではありません。
指示の単純化などは、障害がない子にも有効です。
今後は、区立・私立を問わず、幼稚園の先生や保育園の保育士などに対して研修の範囲を広げて頂きたいと考えております。
運動指導能力の向上はもちろんのこと、こういった研修を幼保連携のきっかけにして欲しいです。

さらに、小学校の体育実技指導研修にも活かして頂き、最も運動が身体に効果を及ぼすと言われている時期に、有効な運動指導をして頂きたいです。

これらのことを通じて子供達に必要な運動能力を獲得させ、子供達の体力と集中力の向上を図る所存です。