トップページ政策教育 > 人格教養教育

人格教養教育

写真 田口佳史先生(真ん中)と人格教養教育プロジェクト事務局 人格教養教育を行うことで、他人とは「感謝の人間関係」を築き、正しい判断基準を身に付けることを目指します。

区においては、教員に対する人事権などがありませんが、区の教育委員会単位や個々の学校でできることは沢山あります。
地域の独自性を活用した規範形成教育の実施を目指します。

なぜ人格教養教育が必要なのか

今の日本の状態は「無規範社会」である、と言っても過言ではありません。
規範とは適切な判断に不可欠な基準のことです。一人一人が違うものさしを持っていては社会の秩序が保たれませんから、人間としての規範が社会的に共有されていなければなりません。
「道徳無き経済は罪悪であり、経済無き道徳は寝言である」(二宮尊徳)と言います。
技術や知識だけを会得するのではなく、江戸期には行われていた人格教養を育んでいく教育を並行していかねばなりません。
人生は判断の連続です。その物事の判断基準こそが、人格教養に裏づけられた規範なのです。
「無規範社会」から脱却するために、知識・技術の教育だけではなく、しっかりとした人格形成ができる教育、すなわち人格教養教育と両立する必要があります。

この事は教育基本法第一条「教育の目的」にも示されています。
「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」
これまでも人格の完成を目指す教育の必要性は認識されていたのですが、どのように人格の完成を目指していくのかが明確ではありませんでした。
法の「教育の目的」の達成に向けた教育を展開する必要があります。

また、子供達の教育においては、自己肯定感が低い子には自己肯定感を高める対応、家庭環境が厳しい子には支援を行う、などの前さばきも必要です。
さらに、正しい判断基準を持つことができた子には、志を育み、自分の人生の目標を設定できるようにして欲しいです。

佐藤一斎の言志四録に
「一燈を提げて暗夜を行く。暗夜を憂うること勿れ、只一燈を頼め。」
という言葉があります。
人生はこの先に何が起こるか分からない暗夜を行くようなものです。
その時に自分の信じる「一燈」を頼み、恐れずに前に進む。
この頼むべき「一燈」こそが、その人の人生の目標であり、信念です。
正しい判断基準を持ち、頼むべき「一燈」を持てるようにすること。
これが教育で果たせれば、自立した社会人を世の中に送り出せることになるのではないでしょうか。

このような教育を行い、個人としては愉快な人生を送れるように、全体としては立派な人材を輩出していけるようにする所存です。

「感謝の人間関係」とは何か

東洋思想家の田口佳史先生は、
「この世は「自己と他者」からできており、自己は一人で他者はその他全員。人間は自己を優先しがちだが、それが過ぎると「利己主義」に陥り、他者に最も嫌われる人間になって孤立する。
逆に「他者優先」で「自己の最善を他者に尽くしきること」を実践すれば「感謝の人間関係」を築くことができる。」と説きます。
人は一人では生きていけません。
歴史の縦糸を意識すれば、今が存在するのは当たり前のことではないと気付きます。
「ありがとう」の反対言葉は「当たり前」です。
自分さえよければよい、ではなく、「先義後利」の考え方を持ち、「感謝の人間関係」を築けるようにしていかねばなりません。

正しい判断基準とは何か

人格教養に裏付けられた規範のこと。
規範とは適切な判断に不可欠な物事の判断基準です。
一人一人が違うものさしを持っていては社会の秩序が保たれませんから、人間としての規範が社会的に共有されていなければなりません。

地域の独自性を活用した規範形成教育の実例 米沢市

写真 上杉鷹山公 具体例として、例えば米沢市の道徳教育のあり方があります。
地域の独自性を活用している例として米沢市の道徳教育が挙げられます。
米沢市では小学校版・中学校版の道徳郷土資料「ふるさと 米沢の心」を作成しています。
中身は郷土にまつわる昔話し、郷土から輩出した人物のエピソードなどで、米沢藩中興の祖といわれる上杉鷹山公の逸話が多く収録されています。
米沢市教育委員会によると、「道徳郷土資料集」は「米沢の歴史と偉人は米沢の誇りであり、これを子供達に伝えるのは当然だ」という思いで作られた資料で、昭和56年に作成された当時から、教職員や保護者を含めて反対意見は出なかったとのことです。

米沢市の教員への初任者研修では、地域として大切な人物である「上杉鷹山」公や細井平洲、のことを必ず教えることが定着しています。
米沢市の学校では、先生も児童も「上杉鷹山」公へ自然と尊称をつけて呼んでおり、表面だけではなく郷土の英雄を敬う気持ちが本当に根付いています。
自分達が歴史の縦糸の中に存在し、郷土の英雄がいたからこそ今の自分達がある、という先人を敬い感謝する気持ちが米沢市では育まれています。

このように教える側の教師と教えられる側の子供のいずれに対しても、当たり前のように地域の偉人に対して敬意を持ち感謝する気持ちを育んでいるということは、生半可なことではできません。
米沢市の道徳教育は、地域の独自性を遺憾なく発揮している好例と言えます。

人格教養教育の推進体制

写真 下村博文文部科学大臣 平成26年6月10日(火)、「人格教養教育推進のための議員連盟」が設立されました。
自民党、民主党、維新の会、みんなの党、結いの党、公明党などに跨る超党派の議員連盟で、設立日現在で70名の衆参議員が趣旨に賛同し、議連に加わっています。

呼掛け人は、事務局長の山田宏代議士。
会長は、下村博文文部科学大臣です。

【議連の目的】
議連の目的は以下の3点。
1.規範形成教育の再興
・子育て(家庭教育)から就学前(幼稚園、保育園教育)、就学後(小学校教育、中学校教育)を通じて、規範形成を一貫性をもって実施する体制の整備

2.教師の養成(規範が教えられる教師の養成)
・家庭教育=親に対する子育て教育支援
・幼稚園、保育園教育=幼稚園教員、保育園保育士に対する教習の機会の提供
・小学校、中学校教育=教師に対する教育機会の提供

3.地域、学校、家庭の三位一体の教育
・家庭教育、学校教育に対する地域からの支援
・地域の独自性を活用した規範形成教育の実施

今後の活動として、講師を招いての研究会、共同政策案の策定など。
この議連から推進法など後押しする政策を打ち出して頂き、地域で実行に移していきたいです!

人格教養教育プロジェクト

人格教養教育プロジェクトは民間の団体で、私はその事務局の一人です。
今後は、新しく立ちあがった議連と連携をしながら、知識・技術偏重の教育から、人格教養を育む教育を並行して行うことを目指します。

豊島区への提言と実践

ふるさと教育

H26.第2回定例会一般質問にて、米沢市の道徳教育をふるさと教育の具体例として挙げ、郷土愛を育むようなふるさと教育の必要性を述べ、現状と展望を問いました。

Q.ふるさと教育についてのこれからの展望は?
A.豊島区には日本中で愛されている「ソメイヨシノ」や明日館宣教師館、染井霊園など、郷土に誇れる文化や伝統、歴史や歴史的文化財が多数あり、これらを活用した学習が展開されている。こうした学習を通して、ふるさとを愛する心情や、ふるさとで学んだことを誇れる日本人、国際人への育てることができる。これからの展望では、新庁舎屋上に完成する「豊島の森」を活用して、かつて根津山に生息した動植物の生態系を学ぶプログラムを開発する。健康プログラム、環境プログラム、歴史や文化を生かした地域学習プログラムなど、義務教育9年間を見通した「豊島ふるさと学習プログラム」として体系化し、ふるさとの学習に活用する。

Q.ふるさと教育を行う上で、なぜふるさと教育を展開するのかなどの目的を共有する必要がある。教える側への研修についてはいかがか?
A.ふるさと教育を一層充実させるためには、教える側である教員が郷土の歴史、伝統、文化についての知見を拡げ、指導に磨きをかけることが大切であると認識。今後も研修内容の改善・充実に努めるとともに、趣旨やねらいを全教職員に徹底し、指導の充実を図る。

※根津山とは?
現在の南池袋公園を含む周辺一帯の旧称。かつては豊かな雑木林となっており、森のように見えたとのこと。1945年(昭和20年)4月13日の城北大空襲で豊島区は消失面積70%という大規模な空襲に見舞われ、多数の死者を出しました。南池袋公園で行われている「根津山小さな追悼式」は、この時の供養。
新庁舎の「豊島の森」は、この根津山と同じくらいの高さに位置するため、当時の動植物の生態系を学ぶことに適す。

弁当の日

H26.第2回定例会一般質問にて、「豊かな人間性」と「健やかな心と体」を育成する為の実践方法として、「弁当の日」を提案。

Q.「豊かな人間性」と「健やかな心と体」を育成する為の実践方法として、「弁当の日」を区でも実施してはいかがか?
A.各学校においては、学校の特色を生かした食育指導を展開しているところであり、「弁当の日」の実施は食育の取組の一環として評価できる。各学校に対して「弁当の日」の実践の意義について積極的に情報を提供する。

Q.実施に当たっては、学校現場の理解だけでなく保護者の理解を得るのも重要。「弁当の日」の講演会を豊島区主催で実施し、学校や保護者への理解を促してはいかがか?
A.企業やPTA主催で食育に関する講演会や多様なイベントが既に開催され、効果を上げている。今後、学校、家庭・地域及び関係機関との連携を図り、情報を共有し、効果的な実施方法について検討。

※「弁当の日」とは?
香川県綾川町の滝宮小学校の竹下和男校長が2001年に始めた試み。給食の代わりに保護者が作った弁当を食べる、という日ではなく、子供自身が作った弁当を持っていく日。献立作り、買い出し、調理、弁当箱詰め、片付けの全てを子供が行い、保護者も先生も、その出来具合を批評も評価もしないという約束で行う。2013年5月27日現在、1200校以上で実践されていて、大きな広がりを見せている。

特別の教科「道徳」の先行実施について

H27.第3回定例会一般質問にて、特別の教科「道徳」の先行実施についてなどを問いました。

<質問の背景>
教育再生実行会議の提言や中央教育審議会の答申を踏まえ、「道徳の時間」を「特別の教科 道徳」として新たに位置づける学習指導要領の一部改正が平成27年3月にありました。
「考え、議論する」道徳科への転換により児童生徒の道徳性を育むことを目標とし、内容については、発達段階をより踏まえた体系的なものに改善すること、問題解決的な学習や体験的な学習などを取り入れて指導方法を工夫すること、数値評価ではなく児童生徒の道徳性に係る成長の様子を把握すること、などが具体的な改正ポイントです。
小学校は平成30年度、中学校は平成31年度から、検定教科書を導入して「道徳科」を実施します。
また、これに先立ち、平成27年度から一部改正学習指導要領の趣旨を踏まえた取組みが可能とされています。

※答弁は全て三田一則教育長。内容は要約している。
Q: 道徳の一部改正学習指導要領は本区の教育目標とも合致するものである以上、極力早く準備をして先行実施をしていくべき。道徳の教科化を見据えた本区での先行実施についての考えは。
A: 本年度(27年度)からの移行措置として、その一部または全部を実施することが可能であると規定されている。他地区に先駆けて、できるだけ早期に実施すべきと考えている。実施に当たっては、検定教科書に準じた教材の準備や授業のあり方を研さん、評価や指導要録の取り扱いなど検討すべき点が多々ある。国の有識者会議による道徳の評価のあり方に関する検討や、東京都が取り組んでいる教材開発の進捗状況を見据えながら、次年度(28年度)からの一部先行実施を視野に準備を進めている。

Q: 25年第2回定例会の一般質問で、郷土愛を育む教育の必要性を述べた。偉人伝は先人の偉業や歴史を知るばかりではなく、教えるべき徳目ごとのケーススタディにもなるため、非常に有効だと考えている。道徳の教科化を踏まえ、本区または都の郷土資料などを活用した副教材の開発も検討できるのではないか。
道徳教育の教材について、現在の活用状況と検定教科書ができるまでの見通し、検定教科書導入後の本区独自の資料の検討についての見解は。

A:現在、各学校では、文部科学省が作成した「私たちの道徳」、東京都が作成した道徳教育教材集、各出版社が作成した副読本等を活用して、道徳の時間の授業を展開。特に文部科学省「私たちの道徳」については、保護者と児童が一緒になって道徳について考え話すことを促す内容となっており、各学校では、家に持ち帰って保護者からのコメントを記入してもらったり、道徳授業地区公開講座で使用したりするなど、活用方法の工夫に努めている。検定教科書ができるまでは、こうした教材などを活用し、指導の充実に努める。
 本区独自の資料の検討については、子供たちの発達段階や特性、地域の実情等を考慮し、多様な教材の活用に努めることが求められていることから、生命の尊厳、自然、伝統と文化など、現代的な課題、特に豊島区の郷土の歴史や文化を学ぶ豊島ふるさと学習プログラムの体系化とあわせて、子供たちが問題意識を持って多面的、多角的に考えたり、感動を覚えたりするような充実した教材の開発に努める。

Q: 道徳の教科化はあくまで手段に過ぎない。教育基本法第1条にうたわれている教育の目的通り、人格の完成を目指す教育をしていかねばならない。
道徳の教科化に対する見解と道徳教育の今後の展開の方向性は。
A:昭和33年、教科書のない道徳の時間が導入されて以来、初めて道徳が教科化され、教育内容としての位置づけが明確になってきた。
 戦後の道徳教育の成立過程では、かつての修身教育の否定から始まった。昭和20年12月、連合国軍総司令部GHQは、修身・日本歴史及び地理停止に関する件を発表し、その後、2次にわたるアメリカ教育使節団の軌道修正により、日本史と地理の停止は解除されたものの、修身の解除はなかった。そのときから、日本の子供たちにとって、人間としてのあるべき姿、基本的な行動規範、誇るべき日本の歴史と文化、自然や郷土を愛する心情などが学校教育の重要な課題から遠ざけられてきた結果、青少年のいじめや問題行動などの対処に苦しむ長い時間が続いてきたことは、衆目の一致するところである。道徳教育の教科化は、教育基本法の真髄とも言うべき人格の完成を目指し、まさにこうした日本人の誇りを取り戻し、世界の中の日本の役割を自覚していく絶好の機会が到来したと考えている。
 今後の展開については、教育ビジョン2015にも位置づけているとおり、次代を担う人材育成のかなめとなる施策を道徳性に裏打ちされた豊かな人間性の育成ととらえ、学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の一層の充実を図っていく。子供たちの自尊感情を高め、規範意識や人間関係を形成する力などをはぐくみ、心に芯を持ち、時代を超えた普遍的な価値を自覚した人材の育成に努める。

応援いただける方募集中

上に戻る